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Time Draw Studio Tokyo

2020.09.11

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Sep / Time Drawers

デザインは、「共育」だ。

左から瀬戸山さんの奥様の真弓さん、小葉ちゃん、そして、右側が今回インタビューさせていただく瀬戸山さん

 

父になったからだろうか。デザインには、「共創」など「創る」という言葉がよく使われるけど、瀬戸山さんからは、「育てる」という言葉が強く感じられた。しかも、それはクライアント、消費者、ディレクターという狭い範囲のミクロ(低次)の意味合いで「共に」育てるのはもちろん、もっと俯瞰したマクロ(高次)の意味合いで「社会」と「共に」育てるが強調されているデザイナー / クリエイターなんだと感じられた。

 

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様々なクリエイターやブランドマネージャーの創作活動における目に見えない価値に触れる「Time Drawers(時を描く者)シリーズ」第一弾は、グラフィックデザイナーの瀬戸山雅彦さんです。

THIRDが2019年6月に創業してすぐに、飲食店ブランディングのプリンティングディレクション兼グラフィックデザインでご依頼してから、現在も同案件で継続したお付き合いをさせてもらっています。

今回のインタビューでは、瀬戸山さんがTime DrawerとしてどのようなWHY(理念)、HOW(こだわり)、WHAT(アウトプット)があるかを、瀬戸山さんのご自宅兼作業場で、奥様とお子様もいるまさに「アットホーム」な環境でインタビューさせていただきました。

 

経歴

 

WHYに入っていく前にご経歴から。

長崎県出身で、転勤族のご家庭の事情から、小学生の時に函館→広島→また長崎→大阪と転校を繰り返した瀬戸山少年。部活はサッカーをしたり登山も好きだったようで、この頃から絵を描いたり、様々な音楽を聴いたりと感性豊かでコミュニケーションを取るのが好きだったようです。

大学はなんとなく「社会学」を学ぼうと有名私立大へ進学しようとしたが、ご両親と話し合った結果、正直本当にやりたいことか?と考え直すことに。昔から絵が好きで上手だったこと、日本IBMのThinkPadのプロモーションを見た時にこんな仕事をしてみたいなーと漠然と憧れを持っていたことも影響しデザインの専門学校へ行くことに。

そこから、夜は学校でタイポグラフィーの面白さを学び、日中は印刷会社のDTPオペレーターをしながら、入稿から印刷実務の経験をし積んでいたとのこと。昼間は印刷の実務で、夜はグラフィックを学ぶって理論と実践がめちゃめちゃ伴う最強カリキュラムですね。。

専門学校卒業後は、憧れていたグラフィックデザイナーである三木健さんのデザイン事務所に23歳で採用され10年間勤めた後、独立。独立と同時に上京しすでに6年。現在は、イラストレーターの奥様と可愛い可愛い一人娘の小葉ちゃんと暮らしている。

 

 

 

WHY(理念)

そんな瀬戸山さんが、アウトプットする上で大切にしているWHY(理念)、つまり「目に見えない価値」を尋ねたところ、それは、一言で述べると「デザインの普遍的価値」でした。お子さんが大きくなっても自分の創ったものが残っていて欲しい、創り出したものが永く使われている、自分の手を離れても成長している。自分だけの、今だけのものではなく、永くみんなのために在って欲しい。そんな想いが瀬戸山さんのアウトプットする上でのWHY(理念)でした。

この理念は、依頼主や社会への「未来」になるべく永く貢献できるアウトプットをするために、背景(過去)や現在の課題感を大事にする三木さんの働き方から学んだそうです。

 

 

HOW(こだわり)

では、いかにして普遍的価値をデザインに持たせるのか。それが瀬戸山さんのHOWになります。やはり重要なのは対話そして温度とのこと。

背景を知りたい。それも、できるだけ生々しい温度で。それは、課題感を共有したいから。

自分自身がその商品やイベント、ブランドなどのファンになりたいからなのだと。

ではその対話や温度を踏まえて、どうやってアウトプットするのか。アウトプットのこだわりを3つのステップで伺いました。

 

1:俯瞰方式

CIAやFBIをテーマにした海外ドラマで観たように、ヒアリングしたキーワードや参考イメージなどを壁に貼り出し、関係性を整理したり、プロジェクトのコンセプトや道標を探る工程

2:原寸確認

可能な限り細部を気にしつつデザインを行う。技術的なところでは文字組。心地よくユーザーに届くかを意識して制作する。そして、その制作物のカンプなどは原寸出力。そうすることで、画面や手元ではわからない、細部の課題に気付くための工程

3:印刷

紙質、しつらえなど印刷に関わる工程。上記1、2をどれだけこだわっても、結局この印刷の工程が疎かになれば、息吹や魂、温度が宿ることはないため、とても重要な工程

 

WHAT(アウトプット)

こうしたHOWから生み出されたWHAT(アウトプットや実績)をご紹介します。

 

サヴィニャックの展示会の広報物

概要

ポスター作家「サヴィニャック」の展示会用ポスター作成

課題

  • 「ポスター作家」のポスターを作らなければいけないため、作品であるポスターに敬意を払いつつ、展示会の期間や場所などポスターとしての情報を盛り込まなければいけないこと
  • 既に完成されているポスターを素材として、あえて極力何も手を加えないポスターを作成するため、「デッドストック状態だったサヴィニャックポスターが発見され、それに、本展覧会情報を白インクで上から刷った」というストーリーとした。

 

ショパンの展示会の広報物

概要

ポーランドとの国交100周年を記念したショパン展のポスター制作

課題

  • ショパンの楽譜など作品だけが展示されるのではなく、ショパンに影響を受けた他者の作品なども展示される
  • 過去のショパンと未来のショパンを感じられる展示
  • 実際にポーランドを視察して感じた東欧グラフィックのエッセンスをどう盛り込むか

 

クープスタンド

概要

現在店舗営業は終了していますが、東急プラザ銀座にあった日本の作家の製品を取り扱う店舗の印刷物周りをご担当

課題

  • 作家のこだわりや息吹を感じてもらうために手書きや手触りにこだわり「手」の感覚を残すこと
  • 視覚的にも洗練された日本の職人感を表現するために、グレーに白を三回上塗りしたり、パール箔押しなどで色味や質感を追求
  • ちなみに、手書きのグラフィックは奥様のイラストに寄るもの。(素敵夫婦✨)

 

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あとがき

 

インタビューをするまでは、コミュニケーション能力が高く、いつもコテコテの関西ノリで明るくお仕事をご一緒できて、信頼できるアウトプットをご提供してくれるデザイナーさんという印象だった。今回、そのコミュニケーションやアウトプットの品質を裏付ける、信念や手段に触れ、本当に「THE」がつくほど、がっつり系クリエイターなんだと体感。

クリエイターというアーキタイプの最重要目的は「意匠を残す」こと。それは、作家として永遠に崇められたいという意味合いではなく、デザイン物を通して、つながりを感じていたい。一緒に創ったものを含めて、忘れて欲しくないというシンプルな想いなんだろうと、瀬戸山さんのインタビューを通して認識が深化した。

ちょっと宗教的になるけれど、人間こそが最高の創造物(デザイン物)であるならば、誰しもが自分を忘れないで欲しい、つながりを途切れさせたくないという想いがあるので、割合はそれぞれでも、誰もがクリエイターであるとも言える。

永遠に忘れないで欲しい。社会における普遍的価値の創造。

それこそが、瀬戸山さんが教えてくれた、デザインであり、社会や他者と共に育む「共育」のデザインでなければ、それは達成し得ないのだと。ちょっと大袈裟ですが、そう瀬戸山さんからのインタビューから教えられた気がした。瀬戸山さん、奥様、小葉ちゃん、今回は本当にありがとうございます!

 

瀬戸山さんのコンタクトやSNS情報は下記になります。制作会社や依頼主のみなさま、ぜひ、瀬戸山さんとのお仕事を通じて、普遍的価値を生み出す「共育デザイン」を体験してみてください!

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瀬戸山雅彦  Masahiko Setoyama

Mail:              setoyama@seto-yama.com

Instagram:   https://www.instagram.com/setoyama_masahiko/

Facebook:    https://www.facebook.com/masahiko.setoyama

 

奥様の真弓さんのインスタグラムも是非フォローお願いします!

Instagram:  https://www.instagram.com/ozawa_mayumi/

 

Writer:Ryotaro Nakajima(THIRD CoFounder)

 

 

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